恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

仕事らしい仕事なのか、よくわからないまま、一ヶ月が過ぎようとしていた。

手応えのある仕事が与えられることがなく、淡々と書類整理に追われる。
他の『カントク』のメンバーは別に仕事をもっているからこんな地味な仕事でもそつなくこなしているけれど。
それでも大泉さんは張り切って仕事を進めていた。

社内のメールアドレスをチェックしていると、大上部長から各人にメールが入っており、部署としての最初の仕事である、商品企画を練ることとして、案件をまとめたいという内容だった。

これは面白いかもと書類整理をしつつ、段ボールに入っていたカタログをチェックしたり、ネットや本の情報で知り得た気になるものをメモする。きっと革新的なものを期待しているのかもしれないと思い、他のひとが考えてこなさそうなものをチョイスして企画書を書いた。

一週間後、フロア内にある部署で使える小さな会議室を借りて、企画会議をすることになった。
各自、気になる商品をピックアップしてきた。

めぼしいものがないかと思いつつ、ネットの反応をみてこれかな、という海外製の香水を紹介した。
ピンク色の小瓶の写真を添えた資料をみんなに配った。

「日本未発売なんですが、この香水をかぐとたちまち気持ちが高まるらしいとか」

少々緊張して上ずった声に反応したのか、くすっと大上部長が笑っている。

「そんなものかいだって誇大広告だって騒がれるのがオチじゃないのかね」

と、森崎さんがわたしの意見に対してばっさり斬る。

せっかく面白い商品だったのに、ダメ出しされて気落ちする。

「椎名さんの案はいいんですけど、一部の消費者しかターゲットになっていないんでね。気になる商品だけれども」

と、やんわりとわたしをフォローしてくれた。
相変わらず大上部長の対応がマイルドだ。
『カントク』の部屋にいたときとは全然イメージが違う。