恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

「なんでそれを」

ノリがいいはずの津島が珍しく真顔をみせる。
わたしは平然を装い、にこやかに笑みをみせてあげた。

「お見通しよ」

「そっか。バレちゃあしゃあねえか。じゃあ、そういうことだ。これでいいか?」

そういって津島は鼻を鳴らしている。
何、その開き直りっぷりは。
あまりに清々しくて、笑いがこみ上げる前に見ていて腹が立つ。

「で、そんなことをいうためにわざわざオレを呼んだってわけ?」

「そうよ。で、別れてくれるの?」

「ああ、いいよ」

津島の潔さには完敗だ。
しかし、喜んでいると思いきや、津島は眉をひそめ、口角がさがっているのが気になった。

「よかった。これで元に戻れるんだね」

そういうと一気に変な空気が部屋の中に流れる。
部屋の壁にかかっている時計の秒針の音だけがむなしく部屋に響く。
津島は、しんとした空気を切るように、きつくため息をもらした。

「何いってんの? お前とはもう終わりだ」

「は?」

「だから、もう萌香とは終わりだって」

嘘……。
あんなにベッドの上でわたしを抱きしめては、好きだ、愛してるって何度も何度も自身を打ち付けてはいってくれていたじゃない。

「終わりって。ずっと一緒にいるっていったじゃない」

「そういうのぞき趣味のおまえとなんか付き合えるわけねえだろ」

そういってぽかんと口をあいたままのわたしなんぞを見る間もなく、津島はそのまま部屋から出ていってしまった。

のぞき趣味って。
あっけない恋の幕引きは引きずることなく終わってしまった。
これからいろんなイベント事があるっていうのに、ひとりで過ごさなきゃいけないわけか。