恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

大上部長は森崎さんから部長の引き継ぎをするため、踏ん反り返りながら話す森崎さんに教えてもらっていた。
あおいさん、わたし、大泉さんは安田さんの指示を仰ぐ。

「受注発注くらいしかないけど。あと、適当に社内からきた資料整理するぐらい」

と、ぶっきらぼうに安田さんは机の島が並んでいる脇に設置されたたくさんのファイルが並べられたスチール棚を指差した。

「他に何か手伝えることはありませんか?」

大泉さんは目を輝かせながら安田さんに聞く。

「資料閉じてないものがあるから、それやっておいて」

と、安田さんはやる気があるのかないのかわからないまま、同じフロアにある給湯室へいくといって席をはずした。

昼休みをはさんでも、森崎さんと大上部長はやりとりを続けていて、わたしとあおいさん、大泉さんの3人でスチール棚の上にのせられた段ボールの中身をチェックする。
国内外の雑貨のカタログがぎっしりつめられている。
中には封筒のまま封を切らずにそのままポイと入れられたカタログもあった。

「チェックしていないのかしらねえ」

と、あおいさんは首をかしげながら、一つひとつカタログを取り出して厚いものは棚に直接、薄いものはファイルに綴じていった。

気がつけば給湯室から安田さんは席に戻っていて、のんびりマグカップでお茶を飲んでこちらをみていた。

自分の仕事が残っているなら『カントク』に戻り仕事を進めるが、萌香ちゃんは直行直帰でいいわよと、この部署に行く前にあおいさんからメールをもらっていた。

定時になるとすぐに森崎さんと安田さんが同時に席をたち、お疲れ様といって退社した。

特別、残業することもないかと二人に続いて帰ることとなった。
フロアの出口に差し掛かった時、

「あ、あの、椎名サン」

立ち止まり振り返ると、後ろからパタパタと足音をたてて大泉さんがこちらへ近づいてきた。

「もしよかったら外まで一緒に帰ってもいいですか?」

「いいよ」

わたしの返事に大泉さんはにこやかに笑顔をみせてくれた。