恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

そういえば横尾さんが見当たらないな、とぼんやりとカウンター前で突っ立っていると、

「あ、あの、マーケティングプラン部ってここですか?」

わたしよりも少しだけ背が低く、黒髪のショートヘアで震えるような小声で話しかけてきた。

「あ、あの、わたし今日からマーケティングプラン部に異動になりました、大泉こずえと申します」

深くお辞儀をし、えらく丁寧な子だなあ、と思った。

「わたしもこの部署に配属になったの、よろしくね」

やさしく話しかけるとはにかんだ顔をみせてくれた。
入り口に近い席にわたしと大泉さんが向かい合わせに座った。

それを見越して大上部長が席を立つ。

「みんな揃ったところで軽く自己紹介をしようか」

大上部長から挨拶が始まった。

大上部長以下、現存する子会社からの出向ということで話が構成されている。

ちなみにわたしは篠崎コーポレーションの営業部からの出向ということになっていた。

晴れやかな自己紹介にみえたが、他の2人をのぞいて、だった。

大上部長のはす向かいに座っていた線が細く、薄ら笑いを浮かべ、暗い印象を放っていた人がいる。

「こんな時期に人事が動くなんてな」

とぼやいていたのは、前部長の森崎だ。
部長から降格されたとはいえ、以前の部署にいられるだけマシな顔をしている。

「だいたいのことは安田がわかっている」

森崎さんの隣には肩までのびる黒髪を耳にかけてツンとした表情を浮かべる女性がいた。

「安田です。よろしくお願いしますね」

一言言い放って腕組みをして座った。
第一印象からして冷たい印象だ。

このメンバーで仕事がスタートするのか、と不安を抱いたけれど、特別班のみんなの顔をみられただけで少しだけ安心した。