恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

「今回、我々特別班の任務は、既存の部署の立て直す」

大上部長が述べると、あおいさんから一人ずつ資料を渡された。

部署は篠崎商事マーケティングプラン部。
主に国内外の雑貨を扱う仕事を行っている。
ちなみに篠崎商事は篠崎グループ傘下の会社だ。

営業収益はさほど問題はなさそうだが、営業利益率をみても他の部署と比べて少し足を引っ張っていることもあり、テコ入れの段階にきていた。

「すでに人事は決まっている。椎名萌香が初めての業務に当たるから、注意事項を。自分の本当の正体を隠すように。以上だ」

大上部長は資料をみる振りをして、ちらりとわたしを見てきた。

「あ、あの、正体を隠すってどういうことですか。一応出向ですよね?」

そういって首を傾げていると、資料を配り終えたあおいさんがわたしの隣に座った。

「ウチの所属はあくまでも特別班なのよ。それをわきまえて仕事を遂行するってこと」

「え、でもこれどう仕事したらいいんですか」

「実践あるのみだ、椎名萌香」

大上部長はわたしに告げると、他のメンバーにいつもの調子で頼みますよ、と念を押していた。

決行日は明日からとある。
果たしてわたしに務まることができるのだろうか。

ただでさえこの『カントク』の部署に慣れていないのに、別の部署で仕事となると気持ちの切り替えができるのだろうか。

「表計算、間違ってる」

ミーティングが終わり、大上部長から与えられた資料作りをしていたときだった。
気がつけば横に大上部長が立っていた。

「ご、ごめんなさい。いつもならこんなミスしないのに」

確かによくわからない数字がパソコン画面に映し出されている。急いで直していると、

「緊張してきたのか? 明日のことで頭がいっぱいなら、景気付けでもしてやろうか?」

と、大上部長が顔を近づけてきたので、

「だ、大丈夫ですって! そうやって人の隙を見逃さないでくださいよっ!」

「安心しろ。みんなついているから。明日の準備があるから留守頼むな」

と、耳元で珍しく優しい声で答えて部屋を出ていった。

大上部長の声にますます反応してしまう。
それよりも明日の仕事のことを考えなくちゃ。