恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

土曜日は日曜日のことで頭がいっぱいでゆっくり過ごせないまま1日を過ごし、日曜の夜を迎える。
今日こそ決着をつけてやる。

あいつーーわたしの彼氏である津島亮太がわたしの自宅ワンルームマンションへとやってきたのは夜も9時を回った頃だ。

黒のジャケットに白いTシャツ。グレーのチノパンを合わせている。
いつも顔を合わせている平日のスーツ姿とは違った、休日の津島のファッションコーディネートだ。
長めの襟足を伸ばし、少し全体の髪をワックスではねさせている。
眉毛を細めにきれいに整え、あごだけにヒゲをたくわえている。
知的でさわやかっぽさを演出しているんだろうか。

「どうした? 萌香。萌香から連絡くれるのって珍しいな。オレのこと、恋しくなったのか?」

津島は部屋に入るなり、甘えた声を発し、わたしの腰に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめた。
少しだけ酒くさいのは気のせいだろうか。

「オレに抱かれたいんだろ。オレもそう思ってた」

スカートの裾をたくしあげようとしたとき、わたしは津島の耳もとで囁く。

「野村加奈さんとわたし、どっちの体が好き?」

津島はびくっと肩を震わせ、スカートの裾をたくしあげようとした右手をとめた。
津島はわたしから体を離す。視線があちらこちらに飛んでいる。

「な、何いってるんだよ」

津島は声をうわずらせ震えている。
明らかにクロだ。もう一発、お見舞いしておこう。

「若い女の子のほうが抱き心地、いいのかもしれないね」

「なんだよ。まったく萌香は冗談好きだな」

目を細め、ほくそ笑みながら津島はわたしに近づき、スカートをまくしあげようとしていた手で今度は髪の毛を撫で始めた。

「知ってる。大会議室で二人で慰めあおうとしてたんでしょ」

津島の髪の毛をなでる手がとまった。