恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

「今日から使えるから。自宅の荷物の移動も明日の朝、伺うようにしてあるから安心して」

「え、も、もうですか?」

「早い方がいいでしょ。安心して仕事に専念してもらわないと」

あおいさんが自信を持って言い切った。
物事の移り変わりの早さについていけないのに、あおいさんの冷静な行動力の早さを痛感する。

部屋を出て、数歩出た廊下で、あおいさんが立ち止まった。

「ちなみにこの扉なんだけど」

と、脇に壁と同じ真っ白な扉があった。
扉を開けると下から吹き抜けるぬるい風が流れ、わたしとあおいさんの髪の毛が風になびいた。

「下の階に通じてるんだけどね」

と、階段を降りると、踊り場の前にIDカードをかざすキーボックスが存在していた。

「ちなみに、ここをこうやってかざしてやって、解錠すると、何と『カントク』のある階に到着するの。便利でしょう」

うふふとふんわりとした笑いをあおいさんはする。
扉を開けると、『カントク』のある廊下に通じていた。

「そういえば、過去にもこの部屋を使っていた人、いたっけ」

といってあおいさんは含み笑いをしている。
大きな重い扉を開けて中へ入るとまた薄暗い部屋の中では多くの人たちがせわしなく働いていて、奥の部屋に行くたびに手をとめてあおいさんはもちろんわたしにまで挨拶をしてくれた。

「ただいま戻りました」

あおいさんが先に部屋の中へ入り、わたしはそのあとを追うように中へと入った。

「ご苦労」

黒服の二人はいなくて、大上部長はいつもの大きな机の前でふんぞり返っていた。

「どうだ。いい部屋だろ」

「……ありがとうございました」

「あとはちゃんと仕事してもらわないとな」

ふん、と大上部長は鼻を鳴らしてわたしを見ていた。