恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

やっぱりここの部署に配属されたってことはそういうことか。
部長におちょくられて自主退職に持っていこうという腹なのかもしれない。
伝票がテーブルから落ちて拾ったとき、ちらりと大上部長の顔をみたけれど、当の本人はしかめっ面をしながらパソコンの前に座っている。

さて明日からどうしようか。
ダンボールの中はすっかりからっぽになり、横にきれいに処理済みに伝票が並んでいる。

「あの、仕事終わったんですけど」

大上部長は顔をあげ、

「今日はあがっていい」

「……わかりました。お疲れ様でした」

大上部長はコクンと軽く頭を縦に振り、パソコンの画面を睨んでいる。
大上部長の後ろの窓からはまだ太陽の光が地上を照らしていた。

壁にかかる時計をみると、まだ17時を回ったばかりだ。
いつもならまだ仕事をしている頃なのに。
就業時間が終わったからそれでいいか。

まだ残業している班のひとたちにお疲れ様でしたと声をかけ、大きな重い扉をあけて外へ出る。
エレベーターに乗りこんだ途端、肩の荷がおりたのかがくっと力が抜けた。

夢でもみているんじゃないかと思った。
というか、この場所は本当に存在するのかと疑問に思った。
エレベーターを降りて駐車場から受付に通じるエレベーターに乗り換えるとようやく現実に戻れたような気がした。

IDカードをかざし帰ろうとすると守衛室にいた横尾さんが小窓越しに声をかけた。

「どうだった? 初日は」

「……わかりません」

「最初はそんなもんだよ。慣れれば過去よりずっと充実するさ」

「お先に失礼します」

なんとか前向きな言葉を投げかけてくれているんだろうけど、わたしの耳からすべて通り越していた。