恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

大上部長の座る席の奥の大きな窓ガラスの前に立つ。
青空も港も遠くの山々も見渡せる絶好のロケーションだ。
この景色をもてあましながら仕事をするのか、と思うともったいないなと思うけれど、それでも早くここから抜け出したい気持ちが強かった。

座っていた席に戻り、椅子の下に置いたカバンからペットボトルの水を飲むと、喉が渇いていたのか半分ぐらいまで飲んでしまった。
やっぱり外の空気を吸ってこようかな、と財布を持って立ち上がろうとしていたところ、部屋のドアが開いた。

大上部長が戻ってきた。
左手には茶色の紙袋を握りしめている。

「買って帰ってきたぞ」

「頼んでないです」

わたしの言葉を無視してテーブルの上にどかっと紙袋を置く。
紙袋のポップなロゴをみる。
確か、ここのお店って会社のビルの中の商業施設内に新しくできた国内初上陸したサンドウィッチ屋さんだ。
朝の情報番組でも行列してまで食べたいお店で紹介されていたのに。

「午後も仕事がある。腹が減ったら仕事にならん。食え」

白い包装紙に包まれた楕円形のサンドウィッチをひとつ取り出すとわたしに差し出した。
ご丁寧にサラダとカップに注がれたお茶までも頂いてしまった。

「……ありがとうございます」

しかたなくサンドウィッチをもらう。
ずっしりと想像よりも重く感じる。
包装紙の上にはBLTと店一番人気の商品だとこれまた情報番組でうたっていたものだ。

大上部長はわたしの右隣の椅子に腰掛けた。
同じものだろうか、紙袋からサンドウィッチを取り出し、包みを広げかぶりついていた。

わたしも包みを剥がし、半月のパンが顔を出す。
おもいっきりかぶりつく。やっぱりおいしい。
サンドウィッチのソースと中に入っている具、パンがどれも相性がよく何個でもいけそうな気がする。

夢中で食べているとすでに食べ終えた大上部長の視線に気づき、まだ半分ぐらいしか食べ進めていないサンドウィッチを口から離した。
じっと見つめてたらせっかくのサンドウィッチの味が減退しそうだ。
それなのに大上部長はわたしに顔を近づけてきて、

「ついてる」

といって、わたしの口角にはみだしたソースを指先で絡め取る。

「ごちそうさま」

といって、ソースのついた指先をペロリと舌で舐めあげた。