恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

わたしの顔が不満げだったのをみて、大上部長は机に両手をつき、立ち上がる。
ゆっくりとした足取りでわたしへ近づいてきた。

「何か問題でもあるのか? あおいみたいに秘書をやりたいのか? お前には絶対に無理だ」

「無理って。確かにわたしが秘書って感じじゃないですが」

誰からみてもあんな美人で仕事ができそうな社長令嬢なんだし、きっと秘書課の人間のスペックは高いに決まっている。
同期で秘書課を希望していた人も中にはいたけれど、結局別の課に配属されていたし。
わたしはハナから秘書課など眼中になく会社の人事に沿ってそのまま入社配属されただけだし。

「戸塚と鈴井のような力技は無理として、横尾さんみたいな警備の職が希望か?」

「それはもっと無理ですって」

大上部長はわたしの目の前に立ち止まる。
背の高い彼の威圧感が強すぎて、戸塚さんと鈴井さんがもし両脇にいたらもっと太刀打ちできないだろう。
わたしは入り口へと数歩後ずさりした。

「じゃあ、この部屋で大人しく仕事すればいい。データ入力だったり企画だったりいろんな部署の仕事をこの部屋から発信できるんだぞ。もちろんお前の実力次第だけどな」

そういってわたしを舐めるように視線を送っている。
自分のやりたい仕事がここでできるなんて、悪い話でもなさそうだ。
でも、大上部長と一緒にいなければならないだけで苦痛になりそうな予感がするけど。

「わかった。条件をくれてやってもいい」

「条件?」

「俺の指示通りに仕事をして納得いったら配置転換を考えてもいい」

「本当ですか!」

「ああ。社員の適正をみて改めて配属しなおすことは必要だろう」

そういうと、大上部長はわたしに歩み寄る。
どきん、と胸が騒いで、わたしの足がすくんだ。
整えられた顔がぐっと距離が縮まっている。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、わたしに自身の顔を近づけた。