恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

IDカードを拾ったときにみせた、あの優しさであふれていた表情と行動とは裏腹に、今ここにいる彼は動じない、冷たさだけを差し向ける別人だ。
わたしをカントクに選んだ理由を知りたい。
あの夜、大会議室に忍び込んだがためにこの男に目をつけられたのだろうか。

「もしかして、わざとわたしをこの課に配属させたんですか?」

「わざとか。呆れるな」

ふっと大上部長はわたしを見てあざ笑った。
そんなことにもめげず、さらに楯突いてやろうと思った。

「あの夜、大会議室でキスしたことで、わたしがセクハラで訴えるのが怖くて監視してるんじゃないんですか」

「勝手にそう思えばいい」

何をいっても突っぱね返される。
さすがにここで失礼しますだなんていったら、給料泥棒だって言いかねない。
しぶしぶ気持ちを切り替えることにした。

「あの、仕事なんですが、どこの班のお手伝いをすればいいんでしょうか」

「お前の仕事場はここだ」

冷たくあしらうようにいうと、大上部長は机を指でとんとんと叩いた。
仕事場って、確かに配属されたのはわかってるけど、さっき横尾さんから班の手伝いをするって聞いたばかりなのに。

「え?」

「俺とこの部屋で仕事をしろといっているんだ。椎名萌香」

「は?」

「だから、特別な任務以外はこの部屋で一緒に仕事をするんだ。いいな?」

「……そんな」

どうしてこんな人と一緒に仕事をしなければならないのか。