恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

重たそうな高級感のあるドアを開け、薄暗いモニターだらけの部屋を通過し、奥の部屋へと横尾さんと一緒に戻る。
明るい日差しをたっぷり浴びてからまた薄暗い部屋へ入ると、やっぱりここはカントクなんだと現実に引き戻された。

「ただいま戻りました」

横尾さんが元気よく声をかけ、特別班の部屋に入り、大上部長の机の前へ立ち止まる。
椅子の背もたれにふんぞり返りながら座る大上部長がちらりとこちらへ視線を向けたので慌ててそっぽを向いた。

「横尾さん、ご苦労様」

「大上部長、自分の持ち場、戻るけど、いいかな?」

「また何かあれば連絡するので」

「了解」

横尾さんは肩をとんとんと叩くと、わたしにあんまり暴言は控えめにね、とつぶやいて部屋から出ていった。

そういえば、さっきから大上部長の両脇にかためられた二人とあおいさんが消えている。
二人だけの空間になってしまったが、メンバー大集結したときの威圧感は薄れていた。
さすがに突っ立っていても仕方がなかったので、しぶしぶ大上部長に目を合わせないように床に視線を向けて話しかけた。

「あの、ほかのメンバーのみなさんは」

「業務に戻っている」

「……そうですか」

「で、横尾さんから特別班の説明があったか?」

「ええ、大抵のことは」

「少しは理解できたか」

理解できたかって?
社員が社員を監視するだなんてそんな会社おかしいに決まってる。
それをどう理解しろっていうんだろう。

わたしは顔をあげ、大上部長を睨みつける。
大上部長は無表情のままわたしをみつめていた。

「理解も何もどうして社員を監視するだなんて。信用してないんですか、社員のことを」

「入社試験に皆パスしているんだ。社長はもちろん信用してるさ。監視対象は全社員だけれど、その中でも特別班で気になった人物のみを特定して監視対象として行っているだけだ」

よくそんなセリフが出てくるな、と感心する。
普通じゃありえないのに平然とした態度に腹立ちを隠しきれず、両手の拳を握った。

「会社の損益を考えての苦渋の選択だ」

温かみもなにもない、冷たさだけが残る言葉だけで、こんな会社の裏事情を知らなければいけないのか、と落胆してしまった。