恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

顔をあげると、入り口付近に設置された監視カメラと目があう。ここでも監視されているのか。

エレベーターとカントクの間の白い壁と壁にはさまれた長い廊下を歩き、突き当りにある天井までのびる窓から外を眺める。
日差しを浴びた会社所有のビルや観覧車、海の水面がきらめいていた。近くにある港をのぞみ、遠くに数隻の船が浮かんでいる。

横尾さんはわたしの右隣に立ち、静かに語り始めた。

「ここの会社の関連企業で以前スパイだったり横領があったり大変な時期を迎えたこともあってね。大きな会社になればなるほど、会社の中の管理に手薄な部分もあったんだ。それを補足するためにこの特別部管理課が誕生したんだ」

就職活動をしたとき、どういう会社か調べたけれど、そんなことひとつも聞いたことがない。
クリーンなイメージが顕著で内部ではそんな大変な歴史があっただなんて知らなかった。

「表向きが人材の墓場だの、閑職だのっていわれているのは、この管理部特別課の本来の目的を知られてしまうと業務に支障がでる。だからあえて負のレッテルを貼っているんだ」

そういえば、配属前にカントクは会社にとってのお荷物的存在も言われていた気がした。
そこまでして会社の秘密を守るためにわざとカントクを底辺だの、人材の墓場だのと揶揄してきたってことなんだ。

そういえば、カントク内のあの薄暗い部屋の中を見渡してもつまらなさそうに動いているわけではなく、逆に生き生きとした顔つきで仕事をこなしている気がする。
自分の仕事に誇りを持っているってことか。

横尾さんは警備員の服装のまま、両手を頭上にあげて、ぐーんと背伸びをしていた。

「横尾さんはどうしてこの課に配属されたんですか?」

わたしの素朴な疑問に横尾さんの硬さの残っていた表情が一気にやわらんで、しわを作って笑っている。