「ほら、早く。前のID出して」
あおいさんがわたしの目の前に立ち、右手のひらを出す。
ピンクのジャケットの袖からのびる白くて透明感のある肌をみて、わたしもこんな風にきれいな肌だったらよかったのに、と現実逃避をしたけれど、したところで何かが変わるわけでもなく、ただ時間だけが経過するだけで部屋のぴりぴりとした空気は変わらない。
しかたなく首からさげていたIDカードケースから入社してずっと使ってきたIDカードをあおいさんに差し出した。
「新しいカードよ」
「受け取れ。椎名萌香」
IDカードを渡したかわりに真っ黒なカードを受け取った。
しっかり顔写真が入ったIDカードだ。
そこには『管理部特別課 椎名萌香』と印字されている。
「これからお前のIDカードはこれだ、いいな?」
わたしは頷きもしないし、返事もしなかった。
「椎名さん、説明するから一緒にきて」
と、横尾さんが申し訳なさそうに話しかけた。
「またわたしに変な監視したらタダじゃおかないですよ」
「まあまあ」
と気持ちをおさえてよ、といいたげな横尾さんは苦笑いを浮かべていた。
「業務のこと理解したらまた戻ってこい」
えらそうな態度のままだったので、大上部長へ返事もせず先に部屋から出ると後を追いかけるように横尾さんがやってきた。
「椎名さん、まずは謝らないとね。監視しちゃってごめんね。仕事だから仕方なくて」
「だからってわたしを監視してたなんて。どうしてわたしを監視してたんですか?」
「カントクにふさわしいかのチェックだよ」
ふさわしいかって。
仕事ができないと烙印を押したってこと?
事業部長よりもせわしなく働いていたのに?
「横尾さんが判断したんですか?」
「最終判断は大上くんだよ」
「……なんで」
反論する気力もなく、その場に倒れたい衝動にかられた。
あおいさんがわたしの目の前に立ち、右手のひらを出す。
ピンクのジャケットの袖からのびる白くて透明感のある肌をみて、わたしもこんな風にきれいな肌だったらよかったのに、と現実逃避をしたけれど、したところで何かが変わるわけでもなく、ただ時間だけが経過するだけで部屋のぴりぴりとした空気は変わらない。
しかたなく首からさげていたIDカードケースから入社してずっと使ってきたIDカードをあおいさんに差し出した。
「新しいカードよ」
「受け取れ。椎名萌香」
IDカードを渡したかわりに真っ黒なカードを受け取った。
しっかり顔写真が入ったIDカードだ。
そこには『管理部特別課 椎名萌香』と印字されている。
「これからお前のIDカードはこれだ、いいな?」
わたしは頷きもしないし、返事もしなかった。
「椎名さん、説明するから一緒にきて」
と、横尾さんが申し訳なさそうに話しかけた。
「またわたしに変な監視したらタダじゃおかないですよ」
「まあまあ」
と気持ちをおさえてよ、といいたげな横尾さんは苦笑いを浮かべていた。
「業務のこと理解したらまた戻ってこい」
えらそうな態度のままだったので、大上部長へ返事もせず先に部屋から出ると後を追いかけるように横尾さんがやってきた。
「椎名さん、まずは謝らないとね。監視しちゃってごめんね。仕事だから仕方なくて」
「だからってわたしを監視してたなんて。どうしてわたしを監視してたんですか?」
「カントクにふさわしいかのチェックだよ」
ふさわしいかって。
仕事ができないと烙印を押したってこと?
事業部長よりもせわしなく働いていたのに?
「横尾さんが判断したんですか?」
「最終判断は大上くんだよ」
「……なんで」
反論する気力もなく、その場に倒れたい衝動にかられた。

