恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

会議室で出会ったときとはまったく違う、ぴりっとした空気をまといながらわたしを睨みつけていた。
どうしてこんな底辺な部署に送られたのかと思うと、本当に気が遠くなりそうになる。

言い返そうものなら、すぐにでも倍に言い返そうな臨戦態勢に口ごもるしかなかった。
なにも言い出せないことをいいことに、黒髪の女性がこちらをみて微笑んでいる。

「さあ、大上部長、気を取り直して自己紹介といきましょうよ」

「ああ。そうだな」

カントクなんか入りたくないって思っているひとに対してのほほんとした自己紹介が始まるっていうの。
黒髪の女性はわたしの気持ちなんかお構いなしに紹介をしはじめた。

「両端に立っている黒服のひとたちは、右手にいるのが戸塚さんと左手にいるのが鈴井さん。二人はこの課で唯一の武道派として活躍してもらっているわ」

両脇を固めた二人の男性は無表情のまま、軽くお辞儀した。

「何かあっても椎名萌香には勝ち目はないから」

と大上部長は鼻でせせら笑っている。

「別に戦おうとは思ってもいませんから」

ようやく口を開いたら、やっぱり大上部長はさらに眼光を鋭くさせていた。
黒髪の女性が困り果てながら、

「で、最後なんですけど」

と紹介しようとしていたところ、バタンと、入り口を開ける音が響く。
見覚えのある男性が息を整えながらこの部屋に入ってきた。

「ごめんね、引き継ぎで遅くなっちゃった」

「守衛さん!?」

「おまえを監視してもらった、ウチのホープといってもいい。課長の横尾さんだ」

「はじめまして、でいいのかな? 横尾です」

横尾さんは守衛の帽子をとって、頭を掻いて照れながら軽くおじぎして、わたしの隣に立っていた。
いつも退屈そうにしていた守衛さんだとばかり思っていたのに。