恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

入り口を入って右側に設置された内線電話で電話をかけた。

「管理部特別課です」

受話器の先から女性の声がした。
この声は以前、聞いたことがあるような。

「今日からお世話になります、椎名萌香です。管理特別課へ行きたいのですが」

「エレベーターで19階へどうぞ」

と言われ、そうそうに電話が切られた。
おそるおそる上矢印のボタンを押し、10人乗りのエレベーターの中へと入る。
中には地下5階と19階の2つだけのボタンがあり、しぶしぶ19階のボタンを押した。

19階に到着し、エレベーターのドアが開く。
事業部のあった階と同様のグレーのカーペットが床に敷かれている。
窓は見当たらず、白い壁と天井までのびる大きなドアしかない。

エレベーターを降りてすぐ目の前の天井には先ほどの地下5階に据えてあったように監視カメラがこちらを狙っていた。
入り口には『管理部特別課』というようなプレートも何も掲げていなくて不安になる。

重厚なこげ茶色の木製ドアをノックし、扉を開けた。
そこでは薄暗いワンフロアーのなかに天井までびっしりと壁伝いにモニターが部屋のあちこちに設置されている。

パソコンのモニターにも同様に画像のようなものが映され、モニターの前やパソコンデスクにはそれぞれマイクつきのヘッドセットを装着した男性や女性たちがひしめき合うように忙しく働いている。

近くにいた男性に声をかけた。

「あ、あの、ここ、管理部特別課、ですよね」

「そうだけど」

「今日配属された椎名萌香といいます」

「椎名……椎名萌香さんが来たぞ!」

その男性がわたしの名前を口にすると、名前が人々に伝わり、中で働いていた人たちは一斉に手をとめる。
こちらに顔をむけ、みんなわたしに向けて拍手をしてくれた。
そんな歓迎されても困ると思っていたら、声をかけた男性はにっこりと微笑んだ。

「椎名さんか。ようこそ、カントクへ。部長がお待ちですよ」

といって、たくさんのモニターを眺めながら、奥の部屋へと案内された。