恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

特別部管理課、別名カントク。

入社時に先輩から聞いた、人材の墓場と称され、社員からは恐れられた課だ。
そこに入れられた人材は出世コースからはずれ、二度と別の部署への配属はできないという。

事業部長はカントクに入れられるのを恐れ、事業部への配属を人事部へ直談判したそうだ。
それが受理されているということは、わたしだってまだ望みは高いかもしれない。

せっかくこの事業部でやりがいが持てるようになってきたっていうのに。
そんなところ、わたしの手で這い上がってやる。

新入社員のテストでは上位だったわたしが。
すぐに人事部に直接電話をかけてみる。

「事業部の椎名萌香ですが、配置転換の件なのですが、なんとかなりませんか?」

「決定ですので」

必死な問いかけもむなしく、電話に出た女性社員がめんどくさそうに答えると、すぐに電話を切られた。

平社員にはそんなおこがましいことは聞いてはもらえなかったか。

異動日は一週間後だ。

わたしがカントクへ異動することは瞬く間に事業部の社員たちに知れ渡った。

就業時間も終わりを告げる頃、トイレへいき、個室のなかへ入ったときだった。
事業部の先輩、後輩グループの女たちが化粧室へと入ってきた。

「椎名ってさ、自分ひとりで頑張っちゃってる感でちゃってて。自意識高すぎてウザ」

「あの子、わざと自分の頭のよさをひけらかしちゃってさ」

「椎名先輩、カントクへいくんですよね。お似合いじゃないですか。だってあのでしゃばった態度、うちの部署にはいらないですよね」

「ホント。プライド高いから、あの子。最初からふさわしくないって」

そういうと、みんな口々にそう思ってたんです的な相槌をしている。
あんなに信頼していた先輩後輩たちからそんな言葉、聞きたくなかった。