恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

昼休みが終わる頃になり、事業部内のあかりが灯り、明るく部屋を照らしている。
事業部のひとたちがぞろぞろと戻ってきた。
そのなかで香水の香りがきつい線の細い先輩の女子社員のひとりから、

「何か変わったことなかった?」

とぶっきらぼうな言い方で聞かれ、

「一件ありましたが、すぐ電話が切れました」

と、強めに言い返すと、

「そう」

と一言だけいう、超かんたんな会話のキャッチボールをして午後を迎える。
これも昼休みがあける前のいつもの会話のひとつだ。

これでいいんだ、別に先輩と仲良くするほどでもないし、先輩よりも仕事をこなしているわたしの方が上なんだから、きっと先輩も留守番に関しても感謝しているにちがいないから。

午後の仕事が再開されると、事業部長から呼び出しされた。

「椎名さん、ちょっといいかね」

ボサボサの頭にかなりの横に広がる体格の持ち主。
以前は別の部署にいたのだが、まぬがれるかのようにこの事業部に配属された。

仕事ぶりは最悪。
イベント会社からの大切な言付けをしょっちゅう忘れるのでしかたなくわたしがその分の仕事をしている。

事業部長のデスクの前に立ち、様子を伺う。
スーツが悲鳴をあげているかのように生地がひっぱられていて、体にあっていないのがよくわかる。

「急で悪いんだが、配置転換の辞令が交付されてね」

「配置転換ってどういうことですか!?」

事業部長はごくりと唾をのみこみ、太い喉を上下に動かした。

「配属先は管理部特別課だ」

「カントク……ですか!?」

管理部特別課という言葉を聞いて、頭のなかが一気に真っ白になった。