恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

昼休みはいつもひとりだ。
そのほうが気持ちが楽だから。

昼休みのみ、事業部のあかりはわたしの座る場所以外、節約ということでスイッチオフされる。
天気予報では晴れの予報だったから窓に降ろされたブラインドを開ければまぶしいくらいの日差しが注がれて気持ち良く仕事ができるはずだが、パンフレット類が日焼けをするとのことで常時ブラインドが降りている状態だ。

気持ちが楽とはいえ、BGMもなく、ただFAX受信の音が鳴り響くだけで自分の座る場所以外は薄暗く静かなこの部屋では気を強く持たないとさみしさが勝ってしまいそうになる。

一度先輩たちに昼ご飯を一緒にと誘われたことがあったけれど、仕事上の付き合いで仲良くしようとは思わなかったから、何やかんやで理由をつけて断っていたら誘われなくなった。

部署ごとや別の部との合同の飲み会もなぜか誘われなくなったけれど、最初はさみしかったけど仕事にきているから誘われなくても別にいいという気持ちで乗り越えた。

事業部のひとたちが全員外へいってしまうのをみて、わたしが留守番するのでと声をあげると、椎名さんがいてくれるから安心して外へ出かけられると歓迎されて以来、ずっとフロア内で自作のお弁当だったり朝出勤前にコンビニへ立ち寄り昼食を買い込んでいた。

昼休みが始まって数分がたち、買って来たサンドイッチを頬張ろうとしていたとき、わたしのデスクの右隅に据えてある電話が鳴った。
しぶしぶサンドイッチを包まれていたビニール袋に戻し、受話器をとった。

「はい、事業部です」

「椎名萌香さん、いらっしゃいますか」

しっかりと芯のある高く澄んだ女性の声が受話器から流れた。

「はい、わたしですが」

すると、すぐに電話が切れた。

内部からかけられているはずなのに、液晶画面には何も表示されてはいなかったが、一度も光ったことがない一番端のボタンの明かりが灯っていた。
確か、この内線ボタンは管理部特別課だったような気がしたんだけれど。