記念すべき入学式。その日は、満開の桜、綺麗な、雲一つない青空だった。

 あいにく、中学生レベルの語彙力しか持ち合わせていない私に、その時の景色をもっと詳しく説明することは出来ない。

 けど、とても綺麗だった。記念すべき入学式にふさわしい、天気だった。


 一週間の仮入部期間。私と、幼馴染みであり親友の玲奈(れな)は、真っ先に、軽音部の部室である、音楽室へ向かった。

 廊下を走る私たちに、「廊下は走っちゃだめ!」と注意した人がいたが、それがどの先生だったか、あるいは本当に先生だったかすら分からなかった。


「失礼します! 一年B組の咲良美桜(さくらみお)と……」

「星野(ほしの)玲奈です」

「入部希望です!」


 大声で、突然入ってきた私たちに、少し驚いてから、「歓迎するよ」と、笑顔で迎え入れてくれた先輩。

 少し厳しいけど、とても、いい先輩方だった。


「あの」


 それからすぐの事。後ろから、女子にしては低めの声が聞こえてきた。

 振り向くと、三白眼で黒髪の人がたっていた。なかなかの美形だが目付きが悪い。そして、青色のネクタイ。

 ネクタイの色で学年を判断できるのだが、私たち一年生は、三年間青色だ。

 つまり、この人も一年生の――。


「一年C組の相良蛍(さがらけい)といいます。私も、入部希望なんですが……いいですか?」


 女子だった。ごめんなさい。スカート見るまで男だと思ってました。

 「おお、三人目!」と喜ぶ先輩方。そこにさらに、四人目の入部希望者が、やってきた。


「あ、あの! 一年A組藤白冬香(ふじしろとうか)と申します! 入部希望です!」


 可愛らしい声だった。見た目もふわふわしている。

 「四人目! やったね!」とはしゃぐ先輩方。もう来ないかな、と一度確認して、部活の説明を始めた。