真理は腕組みをして、叶多のことをじろりと見つめた。

「澄ちゃんを独り占めしないって約束してくれたら良いよ」

「……うん、わかった。松澤さんのことを独り占めはしないよ」

「あのさあ」

突っ込む声は当然の如く無視される。当人がいるのに蚊帳の外でぽんぽん話を進めないで欲しい。しかもなんだ私を独り占めするとかしないって。

「とりあえず事情はわかったから、澄ちゃん、今度ゆっくり馴れ初め聞かせてね!」

「いや、だから」

「あ! 部活始まっちゃう! 澄ちゃんまた明日ねー!」

「ええええ」

私の説明を一切聞かず、真理はさっさとそこから立ち去った。ぱたぱたと足音だけが響いている。

結局、最後までろくに私の話をろくに聞かないで行きやがったなあいつ。

「速水さんすごいな……わかっちゃったのか……でも、黙っててくれてるみたいだから、良かったね」

「何ていうかあんたたち似てるよね……」

もはや星野の勘違いを解く気にもなれず、私は深々と溜息をついた。

仕方ない。真理に本当のことを丸々話すわけにもいかないし、肝心なことを伏せて話したとしても、誤魔化し切れるとも思えない。

少しだけ思案して、とりあえず勘違いさせたままでいいかと結論を出した。別に彼氏だと思われても、叶多なら構わない。