星野はそれきり、何も言わない。願いが何も無い、ということに対して何か言われるかと覚悟していたのだけど、彼はそのまま、ただ星を見上げていた。
「……星野は、何を願うの?」
結局、私の方から口を開いた。
追及してこない星野の優しさに甘えて、さっきの会話なんてなかったように振る舞うことは、逃げることのように感じたのだ。だから、敢えてこの話題を続けようと、思った。
「僕の願い、か……」
星野は空に視線を向けたまま、思案するように口を開く。
「……この星で過ごせる時間が、出来るだけ伸びて欲しい、とは思っているけど」
「え……?」
紡がれたのが、予想もしていなかったもので、私は驚いた。
「好きなんだ。この星のことが。だから、もっとここにいたいって、そう思ってるから」
──何故だろう。星野の言い方に、私は大きな違和感を覚えた。
願っているのに、まるで、諦めているような瞳で、口ぶりで。
ここに留まることが、絶対に叶わないことだと、そう言っているようで。


