「僕達が見ている星も、本当はもう、どこにも無いかもしれないんだ」
同じように星を見上げて、私は黙って星野の言葉を聞いていた。
「それだけ遠く離れている星だから、光が届くのもかなり時間がかかる。だから、僕達が見ているこの星空は、今の姿ではなくて、昔星々が発した光なんだよ。今、こうして光っている星は本当はただの残像で、もう寿命を迎えて、ただの渦になっているかもしれない」
「……」
淡々とした言葉を聞きながら、急に不安が込み上げてきた。
慌てて、星野の手を掴む。その感触に、無性に安心した。良かった、星野は残像じゃない。ちゃんとここに、私の隣にいる。
そんな私を見て、星野は柔らかく笑った。そして、私の手がきゅっと握りこまれる。
「それでもさ、」
いくぶんか近くなったところから、星野の声が響く。
「この星たちは、本当に僕らを見守っているみたいだよね。星に願いをかける人もいるみたいだけど、本当に、叶えてくれそうだもん」
「……」
星に願い、か。
私は何も言えずに、頭上の光を仰ぎ見た。


