「どこに探しに行くわけ?」

──電車を降りて。

どこか楽しげに歩を進める背中に、私は問いかける。

欠片を探しに行こう、という星野の誘いに、特に断る理由もなく、私は頷いていた。

とは言っても、星野は詳しい話はしてくれず、普通に最寄り駅まで電車に乗って、普通に家の方面へと向かっている。

私の問いかけに、星野はくるりと振り返る。

「やっぱり最初はあそこに、行こうと思って」

まっすぐに進行方向を指さした星野は、こころなしか楽しそうだ。

「……もしかして、星見峠に?」

星野の指の先には、空の青とその下の緑……道のずっと向こう、遠くに見える山しかない。

予想通り、彼は大きく頷いた。

「そう! あの山に行きたいなって思ったんだ」

「うーん、別に良いんだけど……」

私は言葉を濁しながら、時刻を見る。六時間の授業を終えてから日誌を書いていたりしてから、今は夕方の五時をまわっていた。

確か、星見峠へ行く平日のバスは四時半で終わっていたはず。

「……この時間だとバスがもうないからさ、歩いていくにしても時間がかかりすぎるんだよね。今度にしない?」

「え、そうなの?」

星野の表情が驚いたそれに変わる。それから残念そうな表情になって一瞬心が揺れるけれど、歩いていたら途中で日が暮れてしまう。