例えば星をつかめるとして

「……ごめん、こういうことしか言えない」

申し訳なくなって思わず謝る。星野はぎょっとした顔をした。

「な、なんで謝るの? 僕は答えが聞けて、謝ってもらうことなんてないよ」

「……うん」

星野の言葉に、嘘は見られない。多分私がいたたまれなくなっているのは、自分で自分の答えに不満があるから、だろう。

間違った答えではないはずだ。ただちょっと、定義的になってしまっただけで。けれど、自分自身にも大きく関係があることをそう結論付けてしまうのは、なんだか寂しいように感じた。理由は、わからないけれど。

唐突に、『夢がない』という言葉が浮かんで、何故かしっくり来た。そうか、夢が、足りないのか。

例えば真理なら、生きることを『幸せを見つけること』だとか言うのだろうか。そういうことが、夢があることというのだろうか。

生きる、って、なんだろう。ただ呼吸をしてここに在ることでは、駄目なのだろうか。

きっと、駄目なんだろう。だから私の鞄の中には、まだ白紙の進路希望票があるわけで。

生きることに素敵な定義を見つけられるような『夢』なんて、どこかに置いてきてしまった。生きる事は、古くなっていくことだ。そんなふうに思った。身体も、心も。少しずつ錆び付いていって、段々動くことも、呼吸することも、何もかもが昔より難しくなっていくんだ。