例えば星をつかめるとして

「……え、」

思わず、途方に暮れた声が出る。

人間、人、間。人間って何かなと来たか。大したことじゃないって言ってたのにその哲学的で深い問いはなんなんだ!? 死角からのアッパーに私は混乱していた。

「人間……」

星野の視線を感じながらも、私はその単語を反芻するのがやっとで、言葉が見つからない。

しばらく唸っていると、申し訳なさそうな表情の星野が口を開いた。

「人間になってみて何日か経つけど、人間ってなんなんだろうって思ったんだ。そんなに難しい質問だったかな……?」

「難しいよ……」

げんなりしながら答える。それから、一つ呼吸をした。

「私も人間だし、真理も人間だし、学校にいる人みんな人間……っていうのじゃ、だめ? 犬とかとの違いはわかるでしょ?」

すると星野は、小さく首をひねる。

「外見の特徴から人間だと認知は出来るけれど、それだと僕も人間だということになってしまわない? そうじゃなくて、僕と人間の違いは、何だと思うのか訊きたくて」

「…………うーん」

私は唸り声をあげて考え込む。星野と人間との違い、ときたか。

「人間特有の特徴としては、言葉をつかう、道具を発明する、文明をもつ、自ら服をまとう、手指が発達していて器用、とか、そんな感じかなあ」

とりあえずどこかで習った内容を引っ張り出しながら、挙げていく。けれどそれは、星野が全てもっているものだ。彼と人間との違い、という問いの答えにはならない。