例えば星をつかめるとして

「……なるほど。どのくらい多かったの?」

「うーん、多分半分以上は学校に関するものだと思うな。思い出そうとする必要もないくらい、もう僕に馴染んでいるものも多いよ」

「そんなになんだ」

自分の頭の中が学校のことばかり、というのはなんだか奇妙な気分だった。そんなに熱心に通っているわけでもないのに、そういうものなのだろうか。

学校なんて狭い世界だ。お前はそれに囚われているのだ、と言われているようにも感じた。

「学校ではなんとかやっていけるけど、それ以外ではちょっと不安だなあ。その時は君に聞くね」

「……私に答えられることならね」

曖昧に頷いて、私はまた止まっていた手を再開させる。もう四限まで書けているのに、妙に進まない。

五限は、生物だったんだっけ。真理のような文系選択とは教科が違うけど、日誌には記入者の一日の時程を書けばいいことになっているからこれで良いだろう。

そう言えば、星野も理系選択クラスということになっていた。というか、全ての授業が私と一緒で、しかも全部私の隣の席にいる。さすがに不審ではないかと思うのだが、クラスの誰もそのことに触れないのだから、きっとまた電磁波で誤魔化しているんだろう。

「……ねえ、松澤さん。僕も質問していいかな」

しばらく日誌を眺めていた星野が、唐突に口を開いた。

「いいけど、何?」

「ありがと。大したことじゃないんだけどね」

そう前置きして、星野は私に問う。





「"人間"って、何かなって」