「澄ちゃん、手止まってるよ? もしかして星野くんに見惚れてた?」

「や、別にそういうんじゃないけど」

真理の軽口を受け流しながら、けれどその言葉ももっともだと思い直して、私が集めたぶんのノートの出席番号順への整理作業を再開させた。

やがて、回収が終わったらしい星野がこちらへ戻ってくる。

「松澤さん、ノート集まったよ。何人か出せない人いるみたいだけど、後から出すよう言っておいた」

「ありがとう。そこに一緒に置いてくれる?」

「わかった。並び替えだよね。僕もこっちからやってくよ」

「お願い」

……何だかすごく、普通の会話だ。むしろ、下手なクラスメイトよりよほど頼もしい。

実際、頼もしいのだ、星野は。

掲示を貼る時だって、高いところは全部引き受けてくれたし、授業準備で音源機器を運ぶのもほとんど星野がやってくれた。

本当なら日誌を出し忘れたのは私で、星野に責任はないはずなのに。