「他の欠片はどこにあるかわかるの?」

「うーん……近くに行かないとわからないからな……」

「なるほど」

つまり今のところは打つ手なし、ということなのか。

それでもいいかな、と思った。そのうち見つかる欠片を、星野と待つのも悪くない。最初は、早く帰って欲しいと思ってたくらいだったのに。

「叶多? また屋根に登ってるのか?」

その時、階下の窓から男の人の──恐らく、この家のおじいさんの声が響く。

「あ、そうです。ちょっと空が見たくなって」

「ははは、お前は昔からそうだもんなあ。気付くと屋根に登っていて、しかも一度も落ちたことがないときたもんだ」

てっきり怒られるかと思ったのだが、おじいさんは笑っている。昔から屋根に登るなんてそういう設定だったのか、なんてことをつい思ってしまい、そんな自分が可笑しかった。

「澄ちゃん、落ちそうになったら叶多にしがみついていいんだからね。女の子が落ちた方が大変だ」

「え、……ふふ。落ちないから安心してください」

つられて私も笑いながら、少し声を張り上げて返した。近所だけど知らない人、だけど、とても暖かい人だろうと思った。さっきのおばあさんにも感じたけれど。




屋根の上から、遮るもの無く降り注ぐ初夏の陽射しは、少しだけ暑い。けれど風が気持ちよくて、私たちはしばらく、そこから天空を眺めていた。