私の問いに、星野は小首を傾げた。

「何の用、っていうか、見張られに来たんだけど」

「見張られに?」

オウム返しに繰り返す。

見張る、という言葉から昼間の会話を思い出す。けれど、わざわざ見張られに来た、とは。

「……わざわざ律儀にどうも。私が先に帰ったんだから、気にしなくても良かったのに」

逃げるように教室を飛び出した気まずさから視線を逸らしつつ言うと、星野がふっと笑ったのがわかった。

「うーん、でも何か、松澤さんといたいなって思って」

「……」

なんだそれ。

胸のうちだけで突っ込む。けれど不思議と、不快な気分はしなかった。

「これからどこか行くの?」

「……帰るだけ、だけど」

「そっか。じゃあ一緒に帰ろう」

私の答えを聞くと、星野はさも当たり前のように言って、さっさと歩き出す。私もつられて、彼に続くように駅へと足を進めた。

一緒に帰ろう、だなんて、考えてみると不思議だ。まるで普通の、人間の友人のようなやりとりをしているなんて。宇宙人なのに。

「えっと、こっちだよね?」

「真逆だから。駅あっち」

「え? でも僕が落ちた山ってあっちだよね」

「歩いて帰れないからね!?」

……前言撤回。やっぱり、普通の人間の友人というには、星野はずれすぎている気がする。