「ほんとはね、一回人間の身体を捨てた時に、地球でのことは全部忘れてしまったんだ。でも、君の声が聞こえて、思い出すことが出来てね。故郷にあのまま帰るより、君に、もう一度会いたいって強く思った。それが出来たら、それこそ流れ星みたいに燃え尽きても良いと思ったんだ」

繋いだ手を、ぎゅっと握られる。後悔は、ないのだろうか。不安げに覗き込む私に、彼は安心させるように笑って見せてくれた。

「故郷に関しては、ずっといたと言っても星だったから記憶なんてなくてね。あんまり思い入れもないんだ。ただ、僕のいれる場所はあそこしかないから、超新星爆発に巻き込まれて消えてしまうとしても、帰ろうと思っていただけでさ」

それにね、と叶多は続ける。

「地球も、僕が大気中に侵入する時に、空気抵抗を減らしてくれたような感じでね。ここにいていいんだ、って、言ってくれてるみたいだったんだ。だから、僕にここを出る理由なんて、もう無いよ。君と、ずっと一緒にいたいと思ってる」

混じりけのない笑顔でそんなことを言われると、さすがに照れてしまう。それでも、嬉しかった。叶多が帰らないということもそうだけど、叶多が地球に歓迎されたことや、宇宙のどこかで孤独に散ってしまうことがない、ということが。