例えば星をつかめるとして


すると、ぽんと、頭に手がのせられる。優しく、あやすように、さらさらと撫でられた。

「大丈夫、会いたいと思っていれば、いつか会えるよ」

「澄ちゃんがそう思ってたら、きっと叶多くんも、会いにくるよ」

二人の言葉が、じんわり優しく胸に響く。それに根拠なんて、ない。二人は叶多の正体も、どこに帰ったのかも知らない。それなのに、その言葉は不思議と重さを伴って、私の中に染み込む。その通りだ、と思った。会いたいと願っていれば、いつか、奇跡が起こるかもしれない、なんて、思うことが出来た。




* *



そして、しばらく二人と話した私は、許可をもらって、二階にあがらせてもらうことになった。

叶多の過ごしていた部屋を、見てみたくなったのだ。

どうやら、だけど、私はこの夫妻とは前々から知り合い、ということになっているらしい。本当は叶多というきっかけが無ければ顔すら知らなかったのに、こういう縁だけは、残ったらしい。少しだけだけれど、そのことに叶多の存在を感じられて、私は嬉しかった。

階段をあがって、一番奥。北向きの部屋だ。日当たりは悪いけれど、叶多の故郷の方角の空を、見ることが出来る。

「ここか……」

そっと扉を開ける。呟いた私の声が、空間に馴染んでいった。