「澄ちゃん、最近全然出かけてないよね? あれ、花火大会って、来たんだっけ?」

「うん、行ったよ」

あの日のことは、覚えていた。結局みんなとはぐれてしまって、叶多と二人だけで見たんだ。もう、遠く離れた昔のことのように感じられるけれど。

「うん、そうだった、よね……? あれ、だれと見てたんだっけ?」

──ところが、私の返答を聞いた真理は、首を傾げている。

それは、そうだろう。だって真理とは見ていないわけだし、私が一緒にいた叶多のことは、真理の記憶から、消えてしまっているのだから。

そうわかった瞬間、ふっと心が、端の方から冷えていくような心地がした。

「あれ、はぐれちゃったんだっけ……? 一人、ではなかったよね……?」

──それ以上、言わないで。

急に、苦しくなった。叶多がいたことが、真理の中でなかったことになっていることを、これ以上見せつけられたくなかった。だって、あんなに、一緒にいたのに。私ほどじゃないけれど、真理だって叶多と話してたじゃん。たまに私を置いて、二人で暴走してたじゃん。

けれど、それを言うことなんて出来なくて、私は、口をつぐむ。

とても、孤独を感じた。私以外の誰もが、叶多がいた事を知らない。みんな、みんな忘れてしまった。