叶多の存在が、学校のみんなの記憶から、学校の中から、綺麗さっぱりなくなっていたように、私にそれが起こらないという確証が、あるわけではない。
そう、思い至った瞬間、恐ろしくなった。私の中から、叶多が消える? 私も、真理やみんなと同じように、叶多のことを何もかも、忘れてしまうの?
すっと、血の気が引く。叶多のことを忘れてしまう事は、耐えられなかった。もう二度と会えないことより、何より、叶多にもらったいくつもの大切な記憶がなくなってしまうことが、恐ろしかった。だって、忘れてしまうという事は、私が大切なものをもっていたということさえも、気付かなくなってしまうということで。
星野、叶多。宇宙から突然やってきた隕石で、私の血をもとに人間の体を得て、突然クラスメイトになった、不思議な人。まっすぐな瞳で、私がいつしか置いてきてしまっていた色々なものを、気付かせてくれた人。
そう、だ。そのはず、だ。何か、忘れている事はないだろうか? さっきみたいに、間違っている事は無いだろうか?


