例えば星をつかめるとして


「水色?」

ふと、引っ掛かりを覚えて、思わず声に出して呟いた。叶多の瞳の色は、あんなに明るかっただろうか?

おか、しい。何かが違う。何かが違うのに、どうだったのか、思い出せない。叶多の瞳がどんな色をしていたか、どんな虹彩に私を映していたのか、思い出せるはずなのに、思い出せない。

落ち着いて、そんなはずはない。私ははやる鼓動をなんとか落ち着かせて、大きく深呼吸した。思い出せ、叶多と過ごした時間のこと。

やっぱり一番多くを過ごしたのは、夜空の下でだろう。星見峠だったり、花火大会だったり、街の上からだったり。

そうだ、叶多の瞳は、夜空のような深い藍色だった。まるで星空を溶かしたかのように深くて、けれど瞬いていて、その瞳に、私は惹かれたんだろう。

ようやく思い出せて、それがとてもしっくりきて、私はようやく安心した。そうだ、それが、私の知ってる叶多の姿だ。

そして、ほっとすると同時に恐ろしくもなった。どうして、叶多の瞳が水色だなんて思ったんだろう。昨日まで当たり前のように見ていて、忘れるはずなんてないのに。

まさか──私の中からも、叶多という存在が、消えかけている?