お祭りの日、叶多は『欠片は全て揃った』と言っていた。私はその時、地球を出発する時は言ってと頼んだはず、だ。叶多もそれに、頷いてくれたのに。
すぐ、いなくなるのかと思っていた。それなのに、何日も変わらない様子でいて、だから、油断してしまったんだ。何の根拠も無いのに、明日もそれが続いていくと。
昨日、別れを告げに来たのだろうか。そんな素振りは、見せなかったのに。
「私にもお別れくらい……ちゃんと言わせてよ」
人気のない公園でぽつりと、空に向かって文句を言う。まだ、言ってないこと、伝えてないこと、沢山あったのに。お礼も、ちゃんと言いたかったのに。
「環境について勉強したいって思ったの、叶多のおかげなんだよ。ちゃんと言いたかったのに、なんで行っちゃうかなあ」
昨日、言おうとして、でもやめた。全てを伝えてしまったら、叶多が行ってしまうかもしれないような気が、ほんの少ししたからだった。でも、こうなるとわかっていたら、ちゃんと伝えたのに。
叶多が、この地球が良いところだと言った。素敵だと、混じりけのない瞳で見つめていた。だから、それを守りたいと思ったのに。私はこの地球がそんなにいいばかりのものではないことを知っているけれど、せめて叶多が好きになったものを、守りたいと思ったのに。何も言わせてくれずに、行ってしまうなんて。


