「なんで……!?」
信じられない、信じたくなかった。どうして、こんなことになっているの? 叶多は、どこにいるの?
また、教室を飛び出す。学校のどこかに、少しでもいい、叶多のいた形跡が残っていないかと、私はその一心で、駆け出した。
* *
そうして、結局、何も見つけられなかった。
学校の職員にも尋ねた。クラスの子にも、尋ねた。誰一人、叶多のことを覚えていなかった。
それだけではなく、備品からも、叶多のいた証拠が消えていた。叶多の使っていたはずのロッカーも、名簿からも。出席番号順に並んだロッカーは、叶多がいなくなったことで位置がつめられて変わっているのに、誰もそれに疑問をもたずに使っているのだ。
きっと、叶多は帰ってしまった。遠い遠い、私には広すぎる宇宙へ、何も言わずに帰ってしまった。そう、思った。きっと、もう、二度と会えないのに。
「叶多……」
名前を呼ぶ。答えてくれる人は、この学校の、街の、地球の、どこにもいない。


