「はは、ちょっと、思うところがあってね」

私は笑いながら、地学の参考書を開いた。正直に言うと、講習も枠が空いていたからたまたま滑り込めただけで、申し込み期間には選択していなかった。

「まあいいや。4時間目まででも問題ないと思うし……ね、今日ね、この近くで花火大会あるんだって! 講習受けてるみんなで行かないかって話してたんだけど」

「花火?」

真理の言葉に、私よりも先に叶多が反応する。

「花火かあ……いいね、行ってみたいなぁ。あ、澄佳はどう?」

行ってみたい、と口にしてから、叶多ははっとしたようにこちらを見る。もしかして、私を気にしているのだろうか。

花火か、と私は考える。地元は山の近くで湖も海も近くにはないので、花火なんて数えるくらいしか見た事はなかった。正直、見てみたくはある。

それでも今までの私だったら、あれこれ理由をつけて断っていたと思う。けれど、今ここには、たまには息抜きだって必要ではないだろうか、と、そう思えるようになった私がいた。

「……行こうかな」

ぽつり、呟く。ぱっと、叶多と真理の表情が明るくなった。