叶多はにこりと微笑んで、頷いた。

「そう。こんなところからでも、星は見えるんだよ。あれだけじゃなくて、見えないだけで、沢山の星が、君を見守っている」

「……」

何が、言いたいのかわからない。けれど叶多なりに私に伝えてくれているようか気がして、黙って耳を傾けた。

「ううん、多分、都会で星が見えないんじゃなくて、みんな忙しくて、見る余裕がないんだよね。目の前のことに手一杯で、近くにあるのに、気付かない」

近くにあるのに、気付かない。

それは、例えばあの星だったり、あるいは、私が探している『未来』だったり、するのだろうか?

「焦って、見渡すことをやめてしまったら、星は気付かれなくなってしまう。だから、焦らないで。君なら、星をつかめると、僕は思うから」

「…………」

私は言葉を返せずに、たった一つぽつりと浮かんだ星を見上げた。

叶多に言われるまで、気付かなかった。いや、気付けなかった。一つだとしても、ちゃんと、星があることに。

それと同じように。存外近くに、見えない道を照らしてくれる『星』が転がっていると、彼はそう言いたいのだろうか。

叶多の顔を、見る。彼は私をまっすぐ見つめて、柔らかく微笑んでいた。

「……ありがとう」

私は、素直にそう言うことが出来た。自然と、同じように微笑みがこぼれた。

重く沈んでいた心は、星の光の瞬きのように軽くなっていた。大丈夫、と、叶多の声が脳内で木霊する。大丈夫、きっと、大丈夫だ。