──の、だけど。

「……大丈夫?」

不意に、耳元で聞こえた声。

衝撃どころか、胃の底が浮き上がるようなあの特有の感覚もない。

もしかして、たまたま居合わせた誰かが、助けてくれた……?

そんな、なんとも楽観的な考えにつられるように、ゆっくり目を開ける。

初めに目に入ったのは、黒とも青とも違う、夜空を溶かしたような色。

それが瞳だと気付くよりも先に、私の身体を覆う銀色が、視界に飛び込んできてしまった。

「……!!!」

悲鳴を、あげるだろうと思った。けれど声帯が痺れてしまったように、息の塊が喉から飛び出るばかり。

本当に驚いた時は、叫ぶ余裕すらないのだと、どこか冷静な自分が囁いた。

そして同時に、先程浮かべた楽観的な可能性を打ち消す。

たまたま居合わせた誰かなんて、いるはずがないじゃないか。あの時広場にいたのは、私とあとはあの物体だけだった。

つまり今、私が相対してるのは──いや、そんな推論なんてなくとも、この銀色で一目瞭然だ。

宇宙人の姿が、私の目の前で変わっていく。──否、色がついていく。

頭の部分に、髪の毛らしき黒が。手足の部分に、肌色が。そしてそれを覆う衣服──何故か学生服だれども。

最後に顔のパーツひとつひとつも形作られて、あっという間に、そこには人間の、男子高校生の姿があった。