「肩のところ、湿ってない?」
頭を預ける体勢でかなり泣いたので、不安になってそう尋ねると、彼は首を横に振った。
「大丈夫。ほら、僕は恒常性が人間より強いから、湿ったくらいだったらすぐに元に戻るんだ」
左肩に手をやって、その手を振って見せられた。確かに、見た目にもすっかり乾いている。
「だから、僕の事は気にしないで。いつだって、君の涙を受け止めるから」
そう言って笑う叶多がここにいてくれて、本当に良かったと思った。彼の前でだから、あんな風に泣けたのだろう。いなければ、きっとあのままもやもやしたものを忘れたふりをして、持ち帰っていた。
叶多なら、相談しても受け止めてくれるだろうか。
「……私ね、夢がないの」
唐突な切り出し方になってしまったけれど、叶多は黙って聞いてくれている。辿々しい言葉ではあるけれど、ありのまま、言おうと思った。
「進路、決めなきゃいけなくなって、色々考えた。でも、何もしたいことが浮かばなくてね。将来何がしたいか、どんな自分になっているのか、それすらも浮かばなかったの」
一息で言って、一度、大きく息を吸う。話し始めたら、意外と落ち着いたまま、続けられた。


