例えば星をつかめるとして


躊躇う私の手を、しゃがみこんだ叶多の手がいとも容易く握り込んで、当たり前のように持ち上げる。視界が、高くなる。

「澄佳、一人で、いなくならないで」

ぎゅっ、と、私よりも高い手の温度を感じて、真摯な瞳に覗き込まれる。そこには見紛うことなく『私』が映り込んでいる。

ああ、なんで、どうして、叶多はこんなにも、私を見てくれるんだろう。

胸がぎゅっと苦しくなる。けれどそれは不快ではなくて、むしろ、嬉しいと思っていて。

──多分、私は、誰でもない人になりたいと願いながら、それでも『私』を、見てほしかったんだろう、と思った。

来て、ほしくなかった。でもそれ以上に、見つけて欲しかった。放っておいて欲しかったけど、来てくれて、嬉しいと思っている。

「……あり、がと」

小さく、でも聞こえるように、呟いた。感極まって、何かが溢れだしそうになって、鼻を詰まらせた。

「……いいよ」

叶多がそう言って、私をそっと引き寄せる。その言葉は、私が逃げ出して、探してくれたことに対してだったのか、それとも私が泣くことに対してだったのか。