「はい」

後ろに座っていた人から、解答用紙の束を送られる。慌てて受け取って、自分のそれを重ねた。

──一瞬しか見えなかったけれど、私の前にあった人のものは、私のものよりも埋まっていた気がする。

ふっと起こりかけた思考を慌てて閉じて、前の人に紙の束を送った。

「解答用紙の確認を行います。終わるまで、席を立たないでください」

また、試験官の声がする。会場は依然、ざわついている。もう帰る準備が万端の人は、少し気が早すぎやしないか。私は逆に、少し遅すぎるのかもしれないけれど。

用紙の確認を行っている試験官の人達の姿を横目に、私ものろのろと筆記用具の片付けを始めた。


──模試が、終わったのだ。


初めて、と言うほどでもないけれど、予備校に通っていない私にしたら久々の模試は、時間があっという間に過ぎていった。もう五科目を終えて、解散の時刻だ。

「澄ちゃーん、お疲れ! 一緒に帰ろ!」

少し離れた席に座った真理が、私の方にぶんぶんと手を振る。真理は気が早い方のタイプだったらしく、もう鞄を机の上に置いて、準備万端といった様子だ。曖昧にそれに返して、けれど私は首を振った。

「……ごめん、用あるから、先に帰って」