どうなのだろう。私は、どう思っているのだろう。

これまで漠然と、無理なものは無理だ、夢を見続ける事は馬鹿馬鹿しい、現実を見なければいけない、と、そんな風に考えてきた。けれど、それは本当に、正しいのだろうか。

「……僕は、蛍、戻ってきたら良いなって、思うよ」

叶多は、私から答えを引き出そうとはしない。無理矢理に言わせようとも、しなかった。

「……私も、見たいとは、思う」

それだけ答えて、私はまた歩き始める。叶多も、同じように足を踏み出したのが、わかった。

何分か前と同じように、再び蝉の喧騒という沈黙に包まれる。その中で、私の胸の中に、投石が投げられたように波紋が広がっていった。





──私の考えてきたことは、本当に『正解』だったのだろうか?