「お前って面白い奴だよな」


うっかり口をついてしまった言葉に、辻原がこちらを見た。

初めは驚いたような、こちらの真意を窺うような表情だったのが、馬鹿にされていると思ったのか次第にふくれっ面に変わっていく。

「…そういうとこな」


くるくると変わる表情は勿論のこと、俺みたいな仏頂面を前にしても他の奴らと違って構えないところとか。

『面白い』というか、やはり『変わっている』。

ただの懲りないヤツなのか。

はたまた学習しない、ただのお馬鹿か。

それだけなのかも知れないが。


見ていて飽きない奴。

そう、思ったところで。


(…この感覚どこかで…?)


何かを思い出し掛けた、その時だった。

突然、つむじ風が吹き荒れる。


ザアアーーーーーッという、強い風に煽られて木々と木の葉が揺れてこすれる音が周囲を包んだ。

その、思わずよろめくような風の勢いに咄嗟に目を瞑ったものの、朝霧は隣を歩く実琴のことが気になり、自分の腕を盾にして僅かに目を開いて見てみたのだが、今までいたそこに彼女の姿がない。

「おい辻原っ?!いったい何処に…っ?」

そんな朝霧の、珍しく張り上げた声さえも風は掻き消していく。


やっと風が治まり静寂が戻ってくると、朝霧は慌てて周囲を振り返り実琴の姿を探した。

(まさか、風に煽られて何処かに飛ばされたなんてことは…)

流石に有り得ないとは思いながらも思わず視線を上へと向けた、その時だった。