「…まったく。本当にらしくない…」

そう、ひとり呟きながらも。

(たまには、そういうのも悪くないのかもな…)

なんて思っていた。

だって本当に可愛いのだから仕方がない。

(ま、アイツの場合『可愛い』というよりは『面白い』だけどな)

思わず、あの小さな姿を思い出してクスリ…と小さく笑った、その時だった。


チリリ…


何処かから小さな鈴の音が聞こえてきた。


「あの音は…」

聞き間違える筈もない。

(あれは、俺がアイツの首に付けてやった鈴の音だ)


この一本道の奥、暗くて見えないその先から音は聞こえてくるようだった。

その音色に誘われるように朝霧は足を早めた。



薄暗い道筋の先を目を凝らすように歩いて行くと、不意にそこに一人の人影が佇んでいるのが見えてきた。

(…誰、だ…?)

ゆっくりと近付いて行くと、それは見知った人物であることが分かる。

高校の制服を身に纏っている、同級生の少女。


「お前…。辻原…?」


実琴は穏やかな笑顔を浮かべた。


何故一人でこんな所にいるのか、とかそんな疑問は特に浮かんでこなかった。

とりあえず、そこに彼女がいたので子猫の居場所を知らないか聞いてみることにする。


すると、辻原はふわりと笑って道の先を指さした。

そして何かを話しているようなのだが、何故か声だけが耳に届いてこないのだった。