「…約2、5m程の高さの枝の上から風に煽られて後ろ向きにバランスを崩して落下。だが、発見された時の体制は左側を地面側に横向きに倒れていた。その時から彼女の意識は既になかった」

「へぇ?詳しいね。見てきたように言うんだね?」

「俺が第一発見者だ」

「…は?」

「………」



その後も二人のやり取りは続いていたけれど、実琴は自分の中の気持ちを整理するのに必死で、ろくに二人の会話は耳に入って来なかったのだった。


思わぬ繋がりに驚いて動揺してしまったけれど。

でも考えてみたら、これは明らかなチャンスだ。


すぐに行かなければならない。そう、思った。

『自分』が入院している病院へ。


そして、その為には…。

明日の朝一で病院へ戻るという朝霧の父親の車に一緒に同乗させて貰うことが一番の近道になる。

…という訳で。


(これは、どうにかして潜入するしかないよねっ)


仕事の荷物か何かに潜むか、車に乗り込む所を狙うか。

だが、よくよく考えてみたら後者は見つかる危険も多く、何より首に付けた鈴の音が鳴ってしまう可能性が大きい。

(それなら、前もって荷物に紛れるしかない)

実琴は決意を固めた。


(…でも…)


自分にとって、次に行動すべき道がやっと開けた筈なのに。

何かが心の片隅に引っ掛かっているような、どこかやるせない気持ちがするのは何故なんだろう。