カワイイ子猫のつくり方

父の、兄と自分に対する態度の温度差に小さな頃は複雑な思いもあったが、実の所それはそれで気が楽だった。

道を決められた兄とは違い、自分には未来を選ぶことが出来るのだから…と。

それでも医療に興味があった自分は『家』とは関係のない獣医としての道を選んだ。

そして将来を誓い合える伴侶を見つけ結婚をし、可愛い一人息子も授かり、とても幸せな生活を送っていた。

『朝霧家』とは離れた別の場所で平凡な家庭を築いていたのだ。


だが、生活はある出来事を境に一転する。

兄が…。

不慮の事故で命を失ってしまったのだ。


父は今まで手塩にかけて来た兄を突如失ったことに嘆き。

だが、即座に次の後継に自分を選んだ。

それはある意味、問答無用に。


『家』に家族ごと引き戻された自分は、獣医から医師への転職を強いられる。

医師免許取得の為、再び学校へ通うことを余儀なくされた。


だが、自分はそれでも。

この家に生まれた以上は致し方ないことなのだと腹を(くく)るしかなかった。

だが、妻と息子には苦痛を強いてしまった自覚はある。


数年前に先代である父は亡くなったが、亡くなるまで家でも父は絶対的な存在で。

伊織の(しつけ)は勿論のこと、様々な面で厳しく取り仕切られていたのだから。



(あんな中で、よくグレずにこうして立派に育ってくれたよな)

本当に心から、そう思う。

それは、きっと。妻が亡き後も伊織を陰からずっと支えてくれていた千代のおかげだろう。