(え?な…に…?)

その、まるで心の奥底までもを見透かされてしまいそうな真っ直ぐな眼差しに。

(な…何か猫として不審な所でもあったかな…っ?)

実琴が思わず不安になりかけていた時。

朝霧の父は、ポツリと呟いた。


「ふむ。成程、メスか」


『!?』

その、何処かで聞いたようなデリカシー皆無の思わぬ言葉に。

(信じらんないっ!)

実琴は瞬時に傍にあった指へと噛みついていた。

「痛ッ」

咄嗟にゆるんだ手の中から、ひょいと床へと飛び降りる。

(前言撤回!!似た者親子だ!完全にっ!!)

実琴は毛を逆立てた。


「まあ!旦那さま、大丈夫ですかっ?」

慌てる千代を朝霧父は手で「大丈夫」と制すると、下から威嚇するように睨みつけて来る子猫を面白そうに見ると微笑んだ。

「ふふっ怒らしちゃったかな?ごめんね。職業柄、クセのようなものなんだ」

そう言ってウインクする。


(く…クセ??)


思わぬ言葉に目を丸くする。

そんな実琴の様子にさえ面白そうにクスクス笑っている。


職業柄ってどういうことだろう?

動物関係の仕事か何かをしているんだろうか。

(飼育員とか、獣医さん。そういう類のもの?)

頭の中でぐるぐる考えを巡らせている実琴が大人しくなったのを見計らって、朝霧父は再び屈み込むと今度は抱えることはせず、そのまま上から優しく撫でた。

「なかなか面白いコだね。気に入ったよ」