いくら得意のお転婆スキルを総動員させようとも、命に関わるとなれば話は別で。

やっぱり怖い。そう思った。

それに、これは自分だけの身体ではないのだから。

(ちゃんと、あの子猫ちゃんに元気な身体のまま返してあげないとね)

戻れるかどうかなんて分からないけれど。

実際にこうして自分が猫になってしまっているという現実がある以上、思いもよらない不可思議なことは起こり得るのだと思うことにした。

(とりあえず…『私自身』は、まだ入院してるってことだけは分かったし。それだけでも進展…かな)


実は、放課後の帰り道。朝霧の制服のポケットに入れられた後に、朝霧と友人が話しているのを聞いていたのだ。





「え?実琴の家…?」

「…ああ」


クラスで実琴と仲の良い友人の紗季(さき)は、昇降口で突然朝霧に声を掛けられ戸惑っている風だった。

朝霧は、その外見から女子に人気は高いが何より『怖い』というイメージが先行しているらしく、紗季も同クラスでありながら、ろくに話したことさえないと言っていた。

そんなこともあり、普段とは違い紗季の声からは緊張気味なのが伝わってくる。

「ネコは…飼っていないと思うよ?確か、実琴のお母さんが動物苦手とかで飼えないんだって言ってた」

「…そう、か」


(朝霧…やっぱり、私の飼い猫なのかと思ってたんだ…)